東京地方裁判所 平成5年(行ウ)144号 判決 1997年4月23日
平成四年(行ウ)第二一三号事件
原告
亘昌子
他一三四名
平成五年(行ウ)第一四四号事件
原告
亘昌子
他一三名
平成五年(行ウ)第三二八号事件
原告
亘昌子
他七〇名
平成四年(行ウ)第二一三号・平成五年(行ウ)第一四四号・平成五年(行ウ)第三二八号事件
原告ら訴訟代理人弁護士
神山美智子
同
土生照子
同
中村雅人
同
光前幸一
同
石原修
同
小林美智子
同
中村忠史
同
浅野晋
同
宮田桂子
同
末吉宜子
同
高井佳江子
右訴訟復代理人弁護士
梶尾公勇
平成四年(行ウ)第二一三号事件
原告ら訴訟復代理人弁護士
高木佐基子
平成四年(行ウ)第二一三号・平成五年(行ウ)第一四四号・平成五年(行ウ)第三二八号事件
被告
国
右代表者法務大臣
松浦功
被告
厚生大臣
小泉純一郎
被告ら指定代理人
浜秀樹
他七名
主文
一 原告らの被告厚生大臣に対する訴えをいずれも却下する。
二 原告らの被告国に対する請求をいずれも棄却する。
三 訴訟費用は原告らの負担とする。
事実
第一 当事者の求めた裁判
一 請求の趣旨
(第一事件)
1 被告厚生大臣がした食品、添加物等の規格基準(昭和三四年一二月厚生省告示第三七〇号)の一部を改正する告示(平成四年一〇月厚生省告示第二三九号)のうち別表1ないし3記載の成分規格を定めた部分及び食品衛生法施行規則(昭和二三年厚生省令第二三号)の一部を改正する省令(平成四年厚生省令第六四号)を取り消す。
2 被告国は、原告ら各自に対し、金五〇万円ずつ及びこれに対する平成四年一二月一七日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
3 訴訟費用は被告らの負担とする。
4 第2項につき仮執行の宣言
(第二事件)
1 被告厚生大臣がした食品、添加物等の規格基準(昭和三四年一二月厚生省告示第三七〇号)の一部を改正する告示(平成五年三月厚生省告示第六八号)のうち別表4記載の成分規格を定めた部分を取り消す。
2 被告国は、原告ら各自に対し、金五〇万円ずつ及びこれに対する平成五年一〇月一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
3 訴訟費用は被告らの負担とする。
4 第2項につき仮執行の宣言
(第三事件)
1 被告厚生大臣がした食品、添加物等の規格基準(昭和三四年一二月厚生省告示第三七〇号)の一部を改正する告示(平成五年九月厚生省告示第二〇〇号)のうち別表5及び6記載の成分規格を定めた部分を取り消す。
2 被告国は、原告ら各自に対し、金五〇万円ずつ及びこれに対する平成五年一二月一〇日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
3 訴訟費用は被告らの負担とする。
4 第2項につき仮執行の宣言
二 請求の趣旨に対する答弁(第一ないし第三事件)
1 被告厚生大臣の本案前の答弁
主文一項と同旨
2 被告らの本案の答弁
(一) 原告らの請求をいずれも棄却する。
(二) 訴訟費用は原告らの負担とする。
(三) 担保を条件とする仮執行免脱の宣言
第二 当事者の主張
一 請求原因
1 被告厚生大臣の行為
(一) 被告厚生大臣は、平成四年一〇月二四日、食品衛生法(平成七年法律第一〇一号による改正前のもの。以下「法」という。)七条一項に基づき、「食品、添加物等の規格基準(昭和三四年一二月厚生省告示第三七〇号)」(以下「規格基準」という。)の一部を改正する告示(厚生省告示第二三九号)をしたが、右告示には、別表1ないし3記載の成分規格を定めた部分がある(以下、別表1ないし3記載の成分規格の定めた告示部分を「本件第一告示」という。)。
(二) 被告厚生大臣は、平成四年一一月六日、法六条に基づき、厚生省令第六四号をもって食品衛生法施行規則(昭和二三年厚生省令第二三号・以下「規則」という。)の一部を改正し、製造、販売等が認められる食品添加物としての化学的合成品として、規則別表第二の三四号の次に、「三四号の二イマザリル」を追加した(以下「本件規則改正」という。)。なお、被告厚生大臣は、同日、法七条一項に基づき、本件規格基準の一部改正として、イマザリルの成分規格及び使用基準を定める旨の告示をし(厚生省告示第二四六号)、「イマザリルは、かんきつ類(みかんを除く。)及びバナナ以外の食品に使用してはならない。イマザリルは、イマザリルとして、かんきつ類(みかんを除く。)にあってはその一kgにつき、0.0050g、バナナにあってはその一kgにつき、0.0020gを、それぞれ超えて残存しないように使用しなければならない」と定められた。
(三) 被告厚生大臣は、平成五年三月四日、法七条一項に基づき、規格基準の一部を改正する告示(厚生省告示第六八号)をしたが、右告示には、別表4記載の成分規格を定めた部分がある。(以下、別表4記載の成分規格を定めた告示部分を「本件第二告示」という。)。
(四) 被告厚生大臣は、平成五年九月一四日、法七条一項に基づき、規格基準の一部を改正する告示(厚生省告示第二〇〇号)をしたが、右告示には、別表5及び6記載の成分規格を定めた部分がある(以下、別表5及び6記載の成分規格を定めた告示部分を「本件第三告示」といい、本件第一ないし第三告示を「本件各告示」という。)。
2 農薬の危険性
農薬は、殺虫、除草、殺菌等を目的として製造・使用されるもので、基本的に有害・有毒な物質であって、本件各告示及び本件省令に係る農薬についていえば、次のような危険性がある。
(一) 発がん性
米国環境保護庁(以下「EPA」という。)は、ペルメトリン、シペルメトリン及びアセフェートを潜在的発がん性物質と認定し、また、発がん性を理由に製造禁止等の規制が検討される可能性のある農薬としてジクロルボス及びジメチピンを指定している。右各農薬について、厚生省が発表した「理論一日最大摂取量」にEPAが算出した発がん危険率を乗じて、日本人の発がん危険率を算出すると、右各農薬のうちジメチピンを除く四農薬については、米国に比して格段に高い危険率を示している。さらに、がんの国際共同研究を助言することを目的として発足した世界保健機関(WHO)の専門機関である国際がん研究機関(以下「IARC」という。)は、ジクロルボス及びアセフェートにつき、人へのがん因子となることの危険を指摘しているし、米国の国家研究評議会(NRC)による発がん危険率の算定によれば、ペルメトリン、シペルメトリンについて「ヒト発がん性の可能性がある」と評価されている。そして、残留農薬の安全性評価において、発がん性物質については、毒性の閾値を設定できないとされており、人が生涯にわたって当該農薬を摂取したとしても安全性に問題のない量と認められる人の一日摂取許容量(以下「ADI」という。)を設定することもできないのであるから、前記各農薬について、ADIを求め、残留基準を設定すること自体許されないというべきである。
(二) 有機リン農薬の慢性毒性
フェニトロチオン、マラチオン、ジクロルボス等の有機リン農薬には、一時的に多量に摂取することによって生じる急性毒性のほかに、これを長期間にわたり微量に摂取することによって生じる慢性毒性のあることが、種々の実験等により明らかにされており、これまで判明しているだけでも、有機リン農薬には、①生体内のコリンエステラーゼの活性を阻害して神経機能に障害を起こし、視力低下、視野狭窄、視神経炎等の眼障害をもたらすこと、②その有する催奇形性、造精機能障害性等により、先天異常、不妊、突然変異などの次世代への悪影響をもたらすこと、③アレルギー性結膜炎の症状を増悪させることなどの毒性のあることが挙げられる。
(三) イマザリルの毒性
イマザリルは、かんきつ類等のかびを防ぐために農産物の収穫後に使用される殺菌剤で、過去に使用等が禁止されたDDTなどと同様の芳香族塩素化合物であって、わが国においては、これまで、農薬としての登録も使用実態もなかったものである。イマザリルは、非常に急性毒性が強い上、経口的に摂取する場合には生殖細胞に大きな影響を及ぼす避妊効果があり、また、発がん性を有するとも指摘されている危険な物質であって、同じ目的で使用される農薬に比べて毒性・残留性の高い物質である。
(四) その他の農薬の危険性
クロルプロファムは、非ホルモン系の除草剤で、ばれいしょにまぶすと、その細胞分裂や呼吸を阻害し、発芽を抑制するものであるが、人に対する安全性が未だ確認されていない物質であり、したがって、ADIも設定できないものである。
また、臭素は、くん蒸剤である臭化メチルの分解産物であるが、動物実験により、高い用量を摂取した場合における不妊作用があるとされている上、食品中のたんぱく質と結合して残留しやすく、多量に摂取すると健康を害するおそれのあるものである。
3 本件各告示及び本件規則改正の違法
(一) 本件各告示の違法
(1) 収穫後使用農薬を容認した違法
本件第一告示は、エトキシキン、クロルプロファム(ばれいしょのみ)、デルタメトリン、ピレトリン、フェニトロチオン、マラチオン、メトプレン、ペルメトリンにつき、本件第二告示は、エトリムホス(なたねのみ)につき、本件第三告示は、イマザリル(果実・ばれいしょ・うり科野菜のみ)、ピレトリン、ジクロルボスにつき、いずれも収穫後使用(ポストハーベスト使用)を前提として、農薬の残留基準値(以下「残留農薬基準」という。)を定めたものである。
収穫後使用とは、農産物を収穫した後に腐敗や虫害等を防止し長期間保存するために、その農産物に農薬をスプレーしたり、混ぜ込んだり、あるいは農産物を農薬の水溶液に浸したりする農薬の使用方法であり、このような収穫後の農産物(食品)の保存を目的として使用する農薬は、法六条にいう「食品の添加物として用いることを目的とする化学的合成品」に該当するから、「人の健康を害う虞のない場合」として厚生大臣が食品衛生調査会の意見をきいて定める場合を除き、その使用等が許されないものである(法六条)。
したがって、本件各告示のうち、食品添加物として指定されていない前記各農薬につき残留農薬基準を設定した部分は、法六条に違反し、違法である。
(2) 発がん性農薬を容認した違法
本件第一告示は、ペルメトリン、シペルメトリンにつき、本件第三告示は、アセフェート、ジクロルボス、ジメチピンにつき、それぞれ残留農薬基準を定めたものであるが、前記のとおり、これらはいずれも発がん性のある農薬であって、本来残留すること自体が許されず、「不検出」との規格を定めるべきであるから、本件第一及び第三告示のうち、右各農薬の残留農薬基準を設定した部分は違法である。
(3) 恣意的な残留基準値の設定の違法
本件第一告示が臭素について設定した残留基準値は、食品衛生調査会の部会がADIにより算出した基準値を、農林水産省の残留実態調査に基づいて大幅緩和したものであり、ADIを基礎に設定した数値を覆し、残留実態を優先させた違法なものというべきである。
(4) 適正手続違反
被告厚生大臣は、本件各告示をするに当たって、食品衛生調査会毒性部会・残留農薬部会合同小委員会が昭和四七年に公表した「食品中の農薬の残留基準設定についての基本的考え方」を全く無視し、何ら正当な根拠もないのに、それよりはるかに穏やかな基準である国連食糧農業期間(FAO)・世界保健機関(WHO)合同食品規格委員会(以下「コーデックス委員会」という。)の残留農薬部会が定めた基準値等に従って残留農薬基準を設定したものである。
このように、本件各告示は、食品衛生調査会の右合同小委員会が決定した審査基準を無視し、さらには農薬取締法に基づき環境庁長官が定める作物残留性に係る登録保留基準(農薬取締法三条一項四号、二項。以下「登録保留基準」という。)をも無視するものであって、憲法三一条の定める適正手続の保障に違反する。
(二) 本件規則改正の適法
イマザリルは、前記のとおり非常に毒性の高い物質であり、このような危険なものを食品添加物に指定した本件規則改正は、法六条に違反するものであり、イマザリルを使用したかんきつ類等を輸入し、その事実を隠蔽していた悪質な業者の違法行為を追認するためにされた違法なものである。
また、被告厚生大臣は、使用基準として、かんきつ類(みかんを除く)及びバナナ以外への使用を禁止しているが、その使用対象外食品からイマザリルが検出された場合でも、収穫後使用かどうかを確認しなければ取り締まれないこととなり、しかも、残留は外国で使用された結果であるから、その使用実態調査は事実上不可能であって、このような欺瞞的な使用基準を付してされた本件規則改正は、法六条及び七条に違反するとともに、適正手続の保障(憲法三一条)にも反するものである。
4 原告らの損害
人は、人格権の一態様としての健康権、すなわち身体の安全、健康への不安に脅かされることなく平穏に生活する権利を有しており、日々の生活に不可欠な食品についても、質量ともに生存及び健康を損なうことのないものを確保する権利があるが、前記のとおり、被告厚生大臣が本件各告示をもって残留農薬基準を定め、本件規則改正をもってイマザリルを食品添加物に指定したこと(以下「本件各行為」という。)は、前記のとおり、いずれも違法であり、これにより原告らは、身体の安全、健康への不安に脅かされることなく平穏に生活する権利(健康権)を侵害され、多大の精神的苦痛を被ったものである。
すなわち、農薬は人の体内に入れば、その発生機序こそ特定できないものの、一定の条件の下に必ず健康被害を発生させるものであり、しかも、食品添加物として指定された場合を除き農薬の使用事実や残留状況を食品に表示する制度がないため、原告らには、危険な農薬が残留している食品を選別して、その摂取を回避する方法が存在しないのであって、被告厚生大臣の本件各行為により、原告らは、農薬に汚染された食品を食べ続けなければならず、そのことによる現実の危険、不安、不快感にさらされ、精神的苦痛を被っているものである。
そして、原告らの右精神的苦痛を慰謝するための金額は、少なくとも本件各事件ごとに、原告ら一人当り五〇万円を下らないというべきである。
5 結論
よって、原告らは、本件各告示及び本件規則改正の取消しを求めるとともに、被告国に対し、国家賠償法一条に基づき、本件各事件ごとに、原告ら各自に対する慰謝料五〇万円及びこれに対する各訴状送達の日の翌日から支払済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める。
二 被告厚生大臣の本案前の主張
1 行政処分性の欠如
本件各行為は、いずれも被告厚生大臣が法の委任に基づいて行った一般的抽象的な法規範の定立行為(行政立法行為)であり、このような法規範の定立行為は、法を執行し具体化する行政処分とはその性質を根本的に異にするものであるから、行政処分性を有しないというべきである(最高裁第二小法廷昭和五六年四月二四日判決・訟務月報二七巻七号一三四四頁)。
もっとも、本件各告示や規則により一定範囲の食品あるいは化学的合成品について一般的に販売等が制約されることになるが、右制約は、将来の営業者一般をも含む不特定多数の者を適用対象とするものであるし、また、右制約に違反し、行政上の処分や刑事罰を受けることとなる営業者等は、それらの処分等を争う前提として、本件各行為の違法性を主張することができるのであって、本件各行為は、特定人の具体的権利義務ないし法律上の利益に直接変動を及ぼすものでなく、抗告訴訟の対象たる行政処分に当たらないというべきである。
2 原告適格の不存在
仮に、本件各行為が抗告訴訟の対象たる行政処分であるとしても、法は、一般的公益としての衛生上の危害の発生の防止並びに公衆衛生の向上及び増進への寄与を目的とし(一条)、右目的を確保する具体的方法として、国民個々人の食品の摂取を規制の対象とせず、もっぱら食品販売等の営業過程を規制の対象としているのであり、一般的公益の達成とは別に、個々の国民の健康等を保護することを目的として行政権の行使に制約を課していることを窺わせる規定はないのであって、原告らには、本件各行為の取消しを求めるについて法律上保護された利益がなく、原告適格がないというべきである。
三 本案前の主張に対する原告らの反論
1 本件各行為の行政処分性について
(一) 行政立法あるいは一般処分であっても、後続の具体的な処分を待つことなく、直接に国民の権利利益に具体的影響を及ぼす場合には、取消訴訟の対象たる行政処分に該当するというべきであるが、本件各行為は、後続の個別具体的な処分を予定しておらず、それ自体で法的効果を生ぜしめるものであるから、行政処分性を有する。
(二) 法四条二号、六条は、農薬や添加物などの有毒・有害な物質が付着、含有されている食品等の輸入・販売等を一般的に禁止するとともに、被告厚生大臣が健康を損なうおそれがない場合として個別にその禁止を解除する制度を採用しているところ、本件各行為はこの個別的禁止の解除に当たるのであって、本件各行為により、食品製造業者等は、食品の販売等を直接制限される反面、定められた基準・規格の範囲内においては農薬や添加物を付着、含有する食品の販売等が許されるという法的効果を受け、同時に、そのような食品を購入しなければならない原告ら個々の国民にとっては、その健康権(質量ともに生存・健康を損なうことのない食品によって健康を保持する権利)が侵害されることになるのであるから、本件各行為は、食品製造業者等や原告らの法律上の権利及び地位に具体的な影響を及ぼすもので、取消訴訟の対象たる行政処分である。
(三) なお、本件各行為は公定力を有するから、本件各行為により、原告らは、定められた基準による食品の摂取を受忍しなければならないことになるのであり、その法的効果を排除するためには、本件各行為の行政処分性が認められるべきである。
2 原告適格について
法は、国民の食生活の安全を目的とし、個々の国民の健康権の確保ないし保護を図ろうとしたものであって、営業者に対する規制は、右目的を達成するための手段にすぎず、法が認めた厚生大臣の権限も、消費者である国民の健康を保護するためのものである。また、法六条及び七条により保護しようとする利益は、個人の生命・健康という最も重大な法益であって、右保護法益の内容・性質からしても、単なる公衆衛生という一般的公益の保護にとどまると解することはできない。
本件各行為は、消費者である原告らの法上保護された安全な食品の供給を受ける権利、すなわち個々の国民の健康に生きる権利(健康権)を直接侵害するものであるから、原告らは、本件各行為の取消しを求める原告適格を有するというべきである。
四 請求原因に対する認否
1 請求原因1の事実のうち、本件第三告示に別表7記載の成分規格の設定が含まれていることは否認するが、その余の事実は認める。
2 同2の事実のうち、農薬が殺虫、除草、殺菌等を目的として製造・使用されるものであることは認めるが、その余は争う。
3 同3、4は争う。
五 被告らの主張
1 農薬の危険性と安全確保について
(一) 残留農薬基準の設定は、公衆衛生の見地から定めるものであり(法七条一項)、どのような場合に基準の設定が必要か、また、具体的にどのような基準を定めるかについては、被告厚生大臣の高度の科学的、専門的判断に委ねられているものである。なお、農作物の生産過程で農薬取締法に従って適正に使用された農薬が残留するのは、生産上やむを得ない場合であって、かつ、一般的に人の健康を損なうおそれがないと認められることから(規則一条二号)、法四条二号ただし書の規定に該当するものとして、右農作物の販売等が許容されているのであり、農薬が残留する農作物の販売等が一般的に禁止されているわけではないのであって、残留農薬基準は、従来何ら規制がなかったものに新たに規制を課して公衆衛生の向上に資するために設定されたものである。
(二) 発がん性について
残留農薬基準の設定に当たっては、当該農薬について、発がん性試験において発がん性が認められた場合、それが遺伝子傷害性と判断される場合には、無毒性量を設定せず、ADIも設定できないと評価して、「検出してはならない」との基準値を設定するが、それが非遺伝子傷害性の発がん性物質と判断される場合には、無毒性量の設定が可能であり、他の毒性試験成績と併せ検討して、ADIを求め、残留基準値を設定することとしている。
原告らは、ペルメトリン、シペルメトリン、アセフェート、ジクロルポス、ジメチピンについて、発がんの危険がある旨主張するが、IARCによる安全性評価、コーデックス委員会に対する諮問機関的な役割を果たしている残留農薬の安全性等に関する国際的な専門家からなるFAO・WHO合同残留農薬専門家会議(以下「JMPR」という。)の安全性評価、国際化学物質安全計画(以下「IPCS」という。)による評価によれば、いずれも一定量レベル以下では、人に対する危険性はないと評価されているものであり、本件各告示に際し、その安全性を検討した食品衛生調査会においても、同様の評価がされたものである。
なお、原告らの主張するEPAの指摘は、米国の医薬品食品化粧品法四〇九条におけるいわゆるデラニー条項(人又は動物にがんを誘発するものは安全とみなしてはならないとする条項)に基づき、動物にがんを誘発するという理由から、アセフェート、イマザリル等の農薬の基準の取消しを提案したものであるが、右デラニー条項は、食品中の残留農薬の安全性評価において、現在の科学レベルからみて適正なものでないことから、既に法改正が行われており、EPAの右指摘は意義を失ったものである。
(三) 有機リン農薬の危険性について
原告らは、有機リン農薬の慢性中毒について主張するが、食品中に残留する程度の低濃度の有機リン農薬の摂取により、眼障害その他の人体への影響が発生することは、科学的に十分証明されたものということはできないし、実際の摂取量がADIを大きく下回っているという実態に照らしても、眼障害等の発生のおそれはないというべきである。
(四) イマザリルの危険性について
本件規則改正に係る食品衛生調査会の審議に際して提出された三世代繁殖毒性試験成績においては、イマザリルの避妊効果は認められていないし、発がん性についても、イマザリルは非遺伝子傷害性の発がん性物質であると科学的に判断されること、JMPRにおいてもADIが設定されていることなどから、一定量レベル以下では、発がん性を含め、安全性の問題が生じるおそれはないものである。
2 本件各行為の違法について
(一) 農薬の収穫後使用について
法六条により使用が禁止されているのは、食品の添加物として用いることを目的とする化学的合成品であって、右添加物とは、「食品の製造の過程において又は食品の加工若しくは保存の目的で、食品に添加、混和、浸潤その他の方法によって使用する物」(法二条二項)をいうのであるから、農薬が収穫後に使用される場合であっても、加工・保存の目的で使用されるのでなければ、法六条の規制を受けるものではないところ、イマザリルを除く他の農薬は、加工・保存の目的で使用されるわけではなく、法六条の規制の対象とならないのであって、添加物としての指定をしなければならない旨の原告らの主張は、その前提を欠き失当である。
(二) 発がん性農薬の容認について
発がん性の作用機序を調査検討した上、非遺伝子傷害性発がん性物質と判断される場合において、ADIから求められる許容される摂取量の範囲内で残留農薬基準を設定したものであり、動物への発がん性が認められたからといって直ちに食品中への残留基準を設定することが違法であるとする原告らの主張は失当である。
(三) 適正手続違反について
適正手続違反とは、行政行為の過程において法が遵守すべきものとして定めた手続規定に違反して行政行為が行われた場合をいうのであって、原告ら主張の基本的考え方は、残留農薬基準を定めるに際しての残留農薬の基準値に関する考え方を内容とするもので、残留農薬基準の設定という行政行為の手続を定めたものではなく、法により遵守すべきものとされているわけでもないから、仮に、本件各行為が原告ら主張の基本的考え方に反するものであったとしても、適正手続違反となるものではない。
また、登録保留基準は、農林水産大臣が農薬の製造業者等から農薬の登録の申請を受けた場合に、登録を保留して当該製造業者等に申請書の記載事項の訂正等を指示するか否かの判断基準として用いられるもので、食品の販売等の規制を目的としてものではなく、残留農薬基準とは法的性格を異にする上、前提となる農薬の使用方法等も全く異なるものであって、両者の基準値の大小を単純に比較することは、食品の安全性を考える上で何ら意味のないことである。
(四) 本件規則改正の違法について
イマザリルについては、わが国における使用実績がなかったため、海外における現地調査等の資料収集を行い、添加物としての目的で使用されている実態が確認された時点で、イマザリルを収穫後使用した農産物の輸入を禁止する通達が出されたが、他方、被告厚生大臣は、イマザリルの添加物指定を希望する法人の要請を受けて、法六条に基づき食品衛生調査会に諮問し、イマザリルの安全性についての厳正な審査に基づく同調査会の答申を得た上で、本件規則改正を行ったものである。
また、添加物としてのイマザリルを取り締まるためには、使用時期を確認する必要があることは原告ら主張のとおりであるが、それはイマザリルに固有の問題ではないし、添加物を使用した食品の輸入に当たっては、輸入時に提出される輸入届書にその使用添加物の記載が義務づけられ(規則一五条一項三号)、罰則規定(法三二条三号)によりその徹底が図られているのであって、取締りの実際上の制約を根拠に本件規則改正を違法とすることはできない。
3 原告らの損害の発生について
(一) 被侵害利益の不存在
原告らが損害賠償請求の被侵害利益として主張する健康権なるものは、実定法上の根拠を欠き、また、その内容も極めて不明確であって、国家賠償法上保護の対象となり得る具体的権利ないし利益ということができない。人の生命、身体等を含む人格的利益が財産的利益以上に保護される場合があることは、健康権という概念を持ち出すまでもなく当然のことであるが、人格的利益といっても、それは極めて多義的な概念であって、それが権利として認められるためには、その意義、要件及び効果等の権利の内容と外延が明確に確立されていることが必要であるところ、原告らの主張する健康権は、抽象的かつ曖昧で、その侵害の有無についての客観的認定は不可能である。
(二) 損害の不発生
原告らが被ったとする損害は、その主張によっても、原告らの健康権の侵害によって現に発生している損害ではなく、将来において健康被害が発生するかもしれないという漠然とした不安にすぎないのであり、そのような個人の内心に生じた抽象的、主観的かつ私的な感情は、国家賠償法において保護の対象となる利益と解することはできないし、国家賠償法において賠償を必要とする現実的な精神的損害が発生していると認められる余地もないというべきである。しかも、原告ら各自の健康被害の発生が立証できない場合において、健康被害発生への不安により内心の静穏な感情を害されないこと自体を法的保護に値する利益と構成して、その不安の発生自体に対する慰謝料請求を認めることは、結局、因果関係の立証のない健康被害について慰藉料請求を肯定することにほかならないのであって、失当である。なお、原告らが主張する不安なるものは、被告厚生大臣と原告らとの間に存する個別具体的な特有の関係に基づくものではなく、単なる原告らの私的・主観的な感情にとどまるものであって、それが国民全体との関係での政治的・社会的問題となり得ることはあっても、原告らにのみ個別的な法的保護を与えるべき理由となるものではない。
六 被告らの主張に対する原告らの反論
1 摂取許容量について
(一) ADIは、動物実験により得られた無影響量に安全係数を乗じて算出されるが、これは絶対的安全性を表すものではなく、あくまでも仮定の数値であって、安全係数が一〇〇分の一と決まっているわけではないのであり、子供の食べ物の場合には一〇〇〇分の一を安全係数とする考え方も提唱されている。また、被告厚生大臣は、農薬残留基準を設定するに当たり、一〇パーセントを水に、九〇パーセントを食品に配分してADIを算出しているが、農薬は大気や室内空気からも摂取されるものであるから、水と食品だけでADIの一〇〇パーセントを占めるようなやり方は、ADIの考え方自体と矛盾しているというべきである。
(二) 被告らは、発がん性物質のうち、非遺伝子傷害性発がん性物質については無影響量ないしADIを設定することができる旨主張するが、発がんの機序は明確に解明されているわけではなく、非遺伝子傷害性発がん性物質であっても、その摂取ないし曝露による人体に対する何らかの影響は否定できないし、また、そもそも当該物質が遺伝子傷害性のものか非遺伝子傷害性のものにすぎないかの判別方法等は全く研究途上にあるといっても過言ではないのであって、極めて限られた動物実験の結果により、発がん性物質の取扱いを区別することは、安全性を軽視しているというべきである。
2 損害の発生について
(一) 民法上、人格権ないし人格的な権利利益の侵害は、不法行為を構成するものであり、また、憲法は、一三条において、個人の幸福追求権を定めるとともに、二五条において、国民の健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を保障し、健康権の尊重を謳っており、さらに、経済的・社会的及び文化的権利に関する国際規約一二条一項も、「すべての者が到達可能な最高水準の身体及び精神の健康を享受する権利を有することを認める。」と定めているなど、健康権は、実定法を根拠として認められる権利であって、国家賠償法上保護されるべき利益である。
また、健康権が実定法上の根拠を有するかどうかは重要ではなく、健康権の内容をなすべき原告ら各自の健康という生活利益に対する侵害が認められれば、その侵害行為による原告らの侵害は、国家賠償法による賠償の対象とされるべきものである。
(二) また、原告らは、本件各行為により、将来健康が害されるかもしれないという抽象的な不安ではなく、回避することのできない健康被害に対する現実的な不安を抱き、これによって健康に関する内心の静穏な感情を現実に侵害されているのであって、このような精神的苦痛も、その侵害行為の態様、程度に照らして、社会生活における受忍限度を超えていれば、国家賠償の対象となる損害というべきである。
第三 証拠
本件記録中の書証目録及び証人等目録記載のとおりであるからこれを引用する。
理由
第一 本件各行為の取消しを求める訴えについて
一 請求原因1(一)ないし(四)の事実は、本件第三告示に別表7記載の成分規格の設定が含まれている点を除き、当事者間に争いがない。
二1 本件各行為が取消訴訟の対象となる行政処分に当たるかどうかについて検討するに、行政事件訴訟法三条二項に定める「行政庁の処分その他の公権力の行使に当たる行為」とは、行政庁が優越的な地位に基づき公権力の行使として行う行為であって、その行為によって国民の権利義務又は法律上の利益に直接影響を及ぼす法的効果を有するものをいうと解するのが相当である。
2 ところで、法七条一項によると、厚生大臣は、公衆衛生の見地から、販売の用に供する食品等に関し、その製造等の方法についての基準又は成分についての規格を定めることができるとし、同条二項により、その基準に合わない方法による食品の製造等及び規格に合わない食品の販売等は禁止されるものとされており、また、法六条は、人の健康を害う虞のない場合として厚生大臣が定める場合を除き、食品の添加物として用いることを目的とする化学的合成品やこれを含む食品の販売等を禁止した規定であり、これを受けて、規則三条において、人の健康を害う虞のない化学的合成品を別表第二のとおりとする旨定めている。本件各告示は、法七条一項に基づく規格基準の一部を改正するもので、穀類、豆類、果実、野菜、種実類、茶及びホップについて、食品の成分規格を定めたものであり、また、本件規則改正は、法六条に基づく規則別表第二の改正であり、販売等が認められる食品添加物としての化学的合成品を指定したものである。
3 そうすると、本件各告示及び本件規則改正は、いずれも法の委任を受けて食品の成分規格を定め、あるいは食品添加物の指定をしたもので、いわば法の規定の内容を補充するものであり、全ての食品の販売等について一般的・抽象的に適用されるものであるから、その性質は、法の委任に基づいて行われた法規範の定立行為であり、法の執行行為としての行政処分とはその性質を異にするということができる。このような行政庁による法規範の定立行為(いわゆる行政立法行為)は、立法府の行う法律の制定行為と同様に、その後の行政庁の具体的な法適用行為を待たなければ、特定個人の個別具体的な権利ないし利益に直接変動を与えることにならないのであって、取消訴訟の対象となる行政処分には当たらないというべきである。しかも、そのような立法行為は、本来、有効か、無効かのいずれかであるべきであって、瑕疵があっても取り消されるまでは有効であるとか、出訴期間内に取消訴訟を提起しなければ、公定力によりその効力を争えなくなるという性質を有するものと解することは妥当でないというべきである。
4 原告らは、本件各行為は、行政庁の具体的な行為を待たずに直接に国民の権利利益に具体的な影響を及ぼすものであるから、行政処分に当たる旨主張する。確かに、前記のとおり、本件各告示により、その基準値を上回る成分を含有する食品は一般的にその販売等が禁止され、また、本件規則改正により、当該化学的合成品を添加物として用いた食品の販売等の一般的禁止が解除されることになるのであるが、これらの禁止あるいは禁止の解除は、現在の営業者(法二条八項)のみならず、将来の営業者を含む不特定多数者を対象として一般的に適用されるものであり、特定の営業者等を対象としたものでないことは明らかであって、この段階では未だ特定個人の具体的な権利利益に影響を与えるものではなく、仮に特定の営業者が法六条、七条二項による禁止に違反した場合に、厚生大臣又は都道府県知事により、食品等の廃棄が命じられあるいは営業停止等の措置がとられることとなって(法二二条)、初めてその権利利益に具体的な変動が生じることとなるというべきであるから、原告らの右主張は採用することができない。
また、原告らは、本件各行為は、販売等が許容された食品を購入しなければならなくなる原告らの健康権を侵害するという原告らの法律上の権利及び地位に具体的な影響を及ぼすものであるから、行政処分に当たる旨主張するが、本件各行為は、一定の食品が含有することのできる各種成分の最大量を定め、あるいはイマザリルを添加物として使用することを認めたものであって、原告ら国民に対し、右成分ないし添加物が含有されている食品の購入を強制するとか、その食品を摂取することを受忍させるという法的効果を有するものでないことは明らかであるし、原告ら主張の健康権なるものが認められるかどうかはともかくとして、本件各行為がその法的効果として国民の生命、身体、健康を侵害する内容のものであるといえないこともいうまでもない(このように、原告らは、本件各行為の法的効果を何ら受けるものでないのであるから、行政処分の法的効果を排除するために認められた取消訴訟を提起できないとしても、やむを得ないといわなければならない。)。
5 したがって、本件各行為は、一般的・抽象的な規範の定立行為であって、特定の国民の権利利益に対し直接具体的な影響を及ぼすものではないから、いずれも行政処分に該当しないといわざるを得ない。
三 以上のとおりであって、本件各行為は、取消訴訟の対象となる行政処分に該当しないというべきであるから、その余の点について判断するまでもなく、本件各行為の取消しを求める原告らの訴えは、不適法として却下を免れない。
第二 損害賠償請求について
一1 原告らは、本件各行為により健康権が侵害されたとして、国家賠償法に基づき、被告国に対し、損害賠償を請求するものであるが、原告らの主張する健康権なるものは、「身体の安全、健康への不安に脅かされることなく平穏に生活する権利」とか、「質量ともに生存及び健康を損なうことのない食品を確保する権利」というもので、その内容が抽象的であり、一定の具体的な意味内容を確定することが困難であって、これを独立した具体的な権利ということができるかは疑問である。しかし、人の生命、身体及び健康が法的に保護されるべき利益であることはいうまでもなく、生命、身体及び健康が侵害され、あるいは侵害される具体的なおそれがあるとすれば、その侵害の排除ないし予防を求めることも許されると解すべきであり、そのような人格的な利益は、これを健康権という独立の権利ととらえることはできないとしても、不法行為法上も保護されるべき法的利益であることは異論のないところといえよう。しかし、本件においては、原告らの主張によっても、本件各行為によって、原告らの身体ないし健康に具体的な障害が発生し、身体ないし健康が現に損なわれているというわけではないのであるから(原告らは、農薬は毒であるから、体内に入れば必ず健康被害を発生させる旨主張するが、現実に原告らの身体が生理的に障害が生じていると認め得る証拠は存在しない。)、原告らには、自己の生命、身体、健康が現に侵害されたことを理由とする損害賠償を認める余地はないというべきである。
2 結局、本件における原告らの主張は、要するに、本件各告示によって定められた残留農薬基準は穏やかにすぎて十分でなく、また、本件規則改正が食品添加物として使用することを認めたイマザリルは有毒有害なものであって、原告らは、それらを含有した食品を摂取せざるを得ないことにより、その生命、身体の安全ないし健康が害されるという危険ないし不安に脅かされながら生活せざるを得ず、精神的苦痛を被っているという趣旨と解される。
これに対し、被告国は、原告らの主張する不安は将来において健康被害が発生するかもしれないという漠然としたものにすぎず、そのような内心の抽象的、主観的な感情は、賠償の対象となる利益とはいえない旨主張する。
確かに恐怖感とか不安感なるものは、個人の内心の感情であり、その発生、程度等は人により千差万別であるから、単に他人の行為によって不安等を感じたからというだけで、これを全て不法行為法上賠償の対象となる損害とすることが妥当でないことはいうまでもなく、したがって、原告らの主張する不安等が、単に将来健康が害されるかもしれないという漠然としたものにすぎないとすれば、そのような感情は賠償すべき損害ということはできないというべきであるが、それが単なる主観的な危惧や懸念にとどまらず、近い将来、現実に生命、身体及び健康が害される蓋然性が高く、その危険が客観的に予測されることにより、健康等に対する不安に脅かされるという場合には、その不安等の気持ちは、もはや社会通念上甘受すべき限度を超えるものというべきであり、人の内心の静穏な感情を害されない利益を侵害されたものとして、損害賠償の対象となると解するのが相当である。
3 したがって、原告らが、本件各行為によって、健康に対する不安等に脅かされ、精神的損害を被ったといえるためには、その不安等が客観的なものとして認められるものでなければならず、単に残留農薬は危険であり健康を損なう可能性があるとか、将来もしかすると健康が害されるかもしれないというような、食品の安全性に対する危惧ないし懸念が存在するというだけではなく、本件各行為に係る残留農薬基準の最大値を含有する食品を摂取することによって、将来、原告らの生命、身体に具体的な障害が発生し、健康を損なう危険性が相当程度の蓋然性をもって予測できることを立証する必要があるというべきであって、その立証の程度は、必ずしも科学的に完全に証明し尽くさなければならないというわけではないが、少なくとも、本件各行為の当時の科学的水準ないし知見のもとで、生命、身体に対する危険の蓋然性が合理的、客観的に認められることが必要であると解すべきである。
4 そこで、以下、本件各行為によって、原告らに精神的損害が発生したといえるかどうか、すなわち、本件各行為に係る残留農薬基準の最大値を含有する食品を摂取することによって、将来、原告らの生命、身体に具体的な障害が発生し、健康を損なう危険性が相当程度の蓋然性をもって予測できるかどうかについて、検討することとする。
二1 まず、残留農薬基準の設定等における農薬の安全性の評価方法についてみるに、成立に争いのない甲第五号証、第二八号証、乙第三九ないし第四一号証、原本の存在及び成立に争いのない甲第七六号証、乙第二七号証、第四二号証、証人小野宏の証言並びに弁論の全趣旨を総合すると、次のような事実が認められる。
(一) 農薬は、殺虫、除草、殺菌等を目的として製造・使用されるものであり(このことは当時者間に争いがない。)、安定した農業生産を確保するためのものではあるが、散布等により農作物に付着したり吸収されたりした農薬は、収穫時にも農作物に残存する場合がある。
残留農薬基準は、公衆衛生の向上に資するために、食品の成分規格として、個々の農作物及び農薬ごとに設定される。農薬が残留している食品が安全なものであるかどうかは、当該農薬の安全性の程度、食品に含まれる農薬の量などによって異なるものであるが、その残留農薬基準の設定は、農薬の安全性を評価するための毒性試験として、マウス、ラットなどの動物を用いて行われる急性毒性試験、慢性毒性試験、発がん性試験、繁殖試験、変異原性試験などが実施され、それらの試験成績に基づき、当該農薬の動物における無毒性量(最大無作用量)が求められる。この動物における無毒性量に動物と人との種差及び人の間の個体差を考慮した安全係数を乗じることによって、人の一日摂取許容量であるADIが決定される。この安全係数は、通常、動物と人の種差を一〇分の一とし、人の間の個体差を一〇分の一として、それらを掛け合わせた一〇〇分の一という数値が基本的に使用されている。もっとも、当該農薬の毒性試験成績等によっては、安全係数として一〇〇分の一と異なる数値が用いられる場合もある(現に、ブタミホスという農薬の残留基準の設定に当たっては、右農薬に遅発性神経毒性が認められることなどから、安全係数としては五〇〇分の一という数値が用いられている。)。
(二) そして、登録保留基準や食品中残留農薬の国際基準などを参考にしながら、日本人一人が平均して一日に摂取する農作物の量に基づき、個々の農作物を介して人が一日に摂取する当該農薬の量を算出し、その量を基準値が設定されている農作物全てについて足し合わせることによって、基準値の上限まで当該農薬が残留した全ての農作物を摂取した場合に、国民が平均して一日に摂取する当該農薬の量(以下「理論一日最大摂取量」という。)を求め、その理論一日最大摂取量が、当該農薬のADIに体重五〇キログラムを乗じて得た人の許容される一日の摂取量を超えることがないように、農作物ごとに残留農薬の基準値が定められることになる。
また、食品添加物の指定についても、前記の各種毒性試験が実施され、前記と同様に、ADIから求められる人の許容される一日の摂取量を上回らないよう、添加物としての使用基準が定められる。
2 右のとおり認められるところ、原告らは、ADIを決定するための安全係数は、絶対的安全性を表すものではなく、より高い数値を安全係数とすべき旨を主張し、証人中南元の証言中にはこれにそうかのような部分もあるが、前掲各証拠によれば、国際的にも、安全係数は、基本的に一〇〇分の一とされているのであって、本件各行為に係る基準値の設定に用いられた安全係数が科学的に不合理、不適切であると認めることのできる証拠はなく、原告らの右主張は採用することができない。
また、原告らは、子供の食べ物についてはより高い安全係数を用いるべきとの考え方のあることや、大気や室内の空気からも農薬を摂取する可能性があることからも、前記のような残留農薬基準の設定方法には問題がある旨主張し、証人中南元の証言中にはこれにそう部分も存するが、人の個体差として一〇分の一の係数を適用していることや、後記認定のとおり、理論一日最大摂取量を指標とする残留農薬の基準値の設定方法は、実際の摂取量より過大な見積りに基づいていることなどからすると、原告らの右主張もまた採用することはできない。
三 そこで、次に原告らが主張する各農薬の危険性について検討する。
1 発がん性(ペルメトリン、シペルメトリン、アセフェート、ジクロルボス、ジメチピン、イマザリル)について
(一) 前掲甲第二八号証、乙第四二号証、成立に争いのない甲第二七号証の一、第九二号証、乙第四号証、第六号証、原本の存在と成立に争いのない甲第四六号証の一、第四七号証、乙第三四、第三五号証、第四四号証、証人外村晶、同小野宏の各証言並びに弁論の全趣旨によれば、次の事実を認めることができる。
(1) ペルメトリン及びシペルメトリンは、殺虫剤として使用されるピレスロイド系の農薬、アセフェート及びジクロルボスは、殺虫剤として使用される有機リン系の農薬、ジメチピンは、除草剤・植物成長調整剤として使用される複素環化合物に属する農薬であり、イマザリルは、殺カビ剤として使用される複素環化合物に属する農薬である。
(2) 一般に、発がん性物質には、遺伝子(DNA)を直接損傷することにより発がん性を示す遺伝子毒性物質(遺伝子傷害性発がん性物質)と、遺伝子(DNA)の直接損傷とは異なる機序により発がん性を示す物質(非遺伝子傷害性発がん性物質)とに大別され、FAO・WHO専門家会議発行の「食品規格課題へのリスク評価の適用」によると、「多くの国で、食品の安全性を所管する当局は、遺伝子傷害性発がん性物質と非遺伝子傷害性発がん性物質を区別しており、この区別は、発がんについての情報と知識が不十分であるため、適用できない場合もあるが、それでもこのような概念は、化学物質への曝露により生ずる発がん危険性に対する評価方策の確立に貢献し得るものである。原則として、非遺伝子傷害性発がん性物質は、安全係数方式のような閾値方式を用いて規制することができるであろう。」と報告されている。
わが国においても、農薬の人に対する発がん性の危険性を評価するに当たっては、遺伝子傷害性発がん性物質と非遺伝子傷害性発がん性物質に分けて考えており、発がん性試験が陽性であっても、変異原性試験(当該物質がDNAに影響を与え、その結果、遺伝子突然変異あるいは染色体の構造異常及び数的異常を起こす性質があるかどうかを明らかにすることを目的とするもので、復帰変異試験、染色体異常試験などを実施して行う。)により発がん性の機序が遺伝子傷害性によるものといえないと判断された場合には、動物に対する発がん性作用における閾値ないし無毒性量を求め、非発がん性農薬の場合と同様の方法により、当該農薬についてADIを設定することとしている。
(3) 国際機関等による前記各農薬の安全性評価についてみるに、FAOとWHOとが共同して発足させ、農薬の毒性、食品への残留について検討しているJMPR、がんの国際共同研究を助言することを目的として発足したWHOの専門機関であるIARCの検討結果によると、① ペルメトリンについて、JMPRは、マウス又はラットにおいて発がん性がないとして、ADIを設定しており、IARCは、発がん性について、ヒトに対する証拠はデータがなく、実験動物に対する証拠は不十分であるとして、発がん性の分類を「3(ヒトへの発がん性について不明)」としている、② シペルメトリンについて、JMPRは、ほとんど組織における蓄積の可能性なしに体内から排出されるように思われるとして、発がん性について言及することなく、ADIを設定しており、IARCは、発がん性について全く分類をしていない、③ アセフェートについて、JMPRは、発がん性について言及することなく、ウサギ催奇形性の無影響量及びヒトのボランティアの研究に基づきADIを設定しており、IARCは、発がん性について全く分類をしていない、④ ジクロルボスについて、IARCは、発がん性について、実験動物に対する証拠は十分だが、ヒトに対する証拠は不十分であるとした上、発がん性の分類を「2B(ヒトに対して発がん危険性の可能性がある)」としているが、JMPRは、哺乳動物を用いた変異原性及び発がん性の研究の結果、ヒトにおいて突然変異又はがんを誘発する可能性は非常に低いとして、ADIを設定しており、また、IPCS(ストックホルム国連人間環境会議の決議をもとに設立された国際化学物質安全性計画)も、食物及び飲料水を経由した場合の一般の人々の曝露は無視してよく、健康有害性の構成要素とはならないと評価している、⑤ ジメチピンについて、JMPRは、ラットの脳組織の病理学的検査結果における所見により、潜在的な催腫瘍性の疑問は解け、発がん性を示さないと結論したとして、ADIを設定しており、IARCは、発がん性について全く分類をしていない、⑥ イマザリルについて、JMPRは、真菌症の女性患者の治療として一日五〇ミリグラムの用量で経口投与を開始し、徐々に増量されたが、薬剤は六か月間明白な毒性を示さず、蓄積や影響もなかったとして、発がん性について言及することなく、ADIを設定しており、IARCは、発がん性について全く分類をしていないという状況にある。
(4) もっとも、米国のEPAは、昭和六二年五月、ペルメトリン、シペルメトリン、アセフェートを含む五五農薬を潜在的発がん物質と認定し、平成五年二月二日には、製造禁止や規制が検討される可能性のある農薬としてアセフェート、ジクロルボス、ジメチピン、ペルメトリンを含む農薬三二品目を公表し、また、平成七年一月ころ、アセフェート、イマザリルほか二農薬について、がんを誘発すると認定して(アセフェートについては、イン・ビトロ試験では遺伝子毒性が認められるが、一部のイン・ビボ試験と細胞遺伝学的結果では遺伝子毒性は否定されている。また、イマザリルの突然変異誘発性に関するデータは、遺伝子毒性作用を示していない。)、デラニー条項に基づきそれらの食品添加物規則を取り消す提案をした。また、米国のNRCは、EPAが潜在的発がん物質と認定した二八農薬について発がんリスクを計算しているが、その発がん性の分類としては、ペルメトリン及びシペルメトリンは、「ヒト発がん物質の可能性がある」に分類され、アセフェートは「分類の検討がなされていない」となっている。
ただし、右EPAの提案等は、米国において、動物にがんを誘発するものは安全とみなしてはならないとするデラニー条項(一九五八年施行)に依拠するものであるが、右デラニー条項のような考え方は、前記のように、発がん性物質を遺伝子傷害性のものと非遺伝子傷害性のものとに区別して検討しようとする今日の一般的な考え方にそれないものとなっており、米国連邦議会においても、デラニー条項は科学的に時代遅れのものになったとの意見もあって、平成八年に改正され、食品中の残留農薬については適用されないこととなった。
(二) 右認定したところからすれば、原告ら指摘の各農薬にヒトに対する発がん性の疑いがあるとしても、いずれも非遺伝子傷害性発がん性物質であると考えられるものであり、最近の一般的な科学的知見からすれば、ADIを設定し得る性質のものといえるのであって、食品を通じてそれらの農薬を摂取することが、その摂取量いかんに関わりなく、およそ人体にとって危険であり、原告らの生命、身体に具体的な傷害を及ぼす蓋然性が高いと認めることはできないし、また、本件各告示及び食品添加物の使用基準に係る基準値が、科学的知見に照らして不合理であって、人の生命、身体に傷害を及ぼし、健康を損なう危険性があると認めるに足りる証拠もないといわなければならない。
(三) 原告らは、中南元が前記の各農薬(イマザリルを除く)について、理論一日最大摂取量をもとに「キュースター」を用いて算出した発がん危険率を引用して、それらの農薬による発がんの危険がある旨主張するが、すでに判示したとおり、最近では、遺伝子傷害性の物質か非遺伝子傷害性の物質かによって規制を区別するのが国際的にも認められた考え方であるし、また、成立に争いのない乙第一号証及び証人中南元の証言によれば、「キュースター」は、高用量の動物試験において観察される腫瘍発生を基に低用量における腫瘍発生率を数学的な推定を用いて算出するものであり、動物試験で観察された腫瘍の種類や発生部位等は考慮されていない上、理論一日最大摂取量を基準に算出していることから、実際の摂取量と比較した場合、格段に大きい数値となっていることなどが認められ、「キュースター」のみに基づいて人の発がんの危険性を論じることは有益であるといい難い。
また、証人中南元は、動物実験で発がん性が証明されたものは、ヒトに対して十分な証拠がなくても、ヒトにとって危険性が高いと考えるべきである旨供述するが、前記認定の事実に照らすと、そのような考え方は必ずしも一般的なものということができず、採用することができない。
2 有機リン農薬の慢性毒性について
(一) 成立に争いのない甲第八号証、第一一号証、第五四号証、第七一、第七二号証、乙第八、第九号証、第一六号証、第二四、第二五号証、第三三号証、第五二号証、第五六号証、原本の存在及び成立に争いのない甲第三四、第三五号証、第四三ないし第四五号証、第五五ないし第五七号証、第六四ないし第六九号証、第七七号証、乙第一〇号証、第一一号証の一、二、第一二ないし第一四号証、第一七号証、第二〇号証、第二六号証、第五五号証、第五七号証、証人宮田幹夫、同小野宏の各証言を総合すると、次の事実が認められる。
(1) 有機リン農薬は、硫黄・窒素等が結合した有機化合物で、現在、有機塩素系農薬に代わって、主に殺虫剤として使用される農薬であるが、有機リン化合物は、比較的早期に分解代謝される(通常の場合、投与後四八時間程度で、その大部分が体外に排出される。)ので、体内にはほとんど蓄積されないといわれている。しかし、有機リン化合物にはアセチルコリンエステラーゼ(神経シナプスにおける刺激伝達物質であるアセチルコリンの分解酵素)の活性を阻害する作用があり、右阻害はすぐに回復しないので、阻害が蓄積されると、視力低下・視野狭窄等の視神経症状を中心とした中毒症状を引き起こす場合があるとの見解が、長野県佐久地方における眼障害の報告以降、眼科学の文献等において指摘されている。
(2) しかし、右有機リン農薬による眼障害説については、国内においても、毒物学者、衛生学者を初め、農薬中毒研究者の間に種々の異論、反論があり、長野県佐久地方の眼障害の報告についてもデータに乏しいとの批判がされ、また、和歌山県田辺市及び近郊の小中学校児童生徒を対象に行われた集団検診の結果、有機リン農薬等の慢性中毒によると考えられる典型的な視野異常者は検出されなかったとの報告がされているほか、ビーグル犬を用いて、有機リン系農薬(スミチオン、バイテックス)の長期微量投与による慢性中毒実験を行った結果、血液コリンエステラーゼが著明に低下したにもかかわらず、全身及び眼に著明な変化を認めなかったとの報告もされている。また、海外においても、米国のヴァンダービルト大学医学校の生化学部環境毒性センターの生化学教授であるヘイズは、その論文において、日本における眼障害に関する研究について紹介した上、仮に「佐久病」のようなものがあるとしても、それが有機リン系殺虫剤に関連したものであることを疑わせる理由はどこにも存在しないと論述しているし、また、比較眼科学会などが企画した「有機リン酸エステル曝露の眼作用に関するシンポジウム」においては、日本で行われた研究に言及し、「全体として、日本の報告書は、関連性の問題提起には役立つが、因果関係の確立に当たって現在我々が普通だと考える証拠水準ではない」と指摘しているほか、実施した試験結果によると、有機リン農薬によるアセチルコリンエステラーゼの有意な阻害自体がみられなかったとの報告もされている。
(3) また、モルモットを用いた実験的アレルギー性結膜炎の症状が、フェニトロチオンの投与によって増強されたという実験結果が報告されているが、右試験に用いられた方法は、科学的に一般的な方法ではないとの批判がされているほか、右と基本的に同一の実験を行ったところ、全く異なった結果が得られ、フェニトロチオンは実験的アレルギー性結膜炎に対して増悪作用を示さなかったことも報告されており、前記実験の再現性等には疑問が残る。
(二) 右認定したところからすれば、有機リン農薬の低用量の長期間摂取による眼毒性については、学問的にも見解が対立しており、その因果関係をにわかに肯定することはできないというべきであるし、また、そのアレルギー性結膜炎との因果関係も的確に認めることができない。
なお、原告らは、全国各地の野猿公園で奇形のサルが観察される事実から、有機リン農薬の催奇形性を主張するもののようであるが、成立に争いのない乙第五号証及び証人中南元の証言によれば、有機リン農薬等とニホンザルの奇形発生との因果関係については未だ不分明であるといわざるを得ない(なお、原本の存在と成立に争いのない甲第二三号証によれば、有機リン農薬は造精機能に対する障害を及ぼすとの指摘がされていることが認められるが、それが科学的に一般的な見解であるといえるのかどうか疑問がある。)。
したがって、食品を通じて有機リン農薬を摂取することにより、原告ら主張のような人体に対する障害を引き起こし、原告らの生命、身体に障害を及ぼす蓋然性が高いと認めることはできないし、本件各告示に係る基準値が科学的知見に照らして不合理であって、人の生命、身体に障害を及ぼし、健康を損なう危険性があると認めるに足りる証拠もない。
3 イマザリルについて
発がん性については、既に検討したとおりであるが、原告らは、発がん性のほかにも、生殖細胞に大きな影響を及ぼすなどとも主張する。証人中南元は、イマザリルの三世代繁殖試験成績を閲覧したが、生存胎仔率が最低用量においても低下しており、催奇形性試験成績においても、四項目に有意差が認められると聞いている旨供述するが、原本の存在及び成立に争いのない乙第二号証の繁殖試験成績によると、生存胎仔率に顕著な差を見いだすことはできないし、また、同号証の催奇形性試験結果においても、最低用量を投与した場合には特段の影響が見られないことや、成立に争いのない甲第九号証によれば、中南元は、「厚生省に出向いて、ヤンセン社が提出した資料そのものを見せてもらいましたが、概要に不審な点は見られませんでした」と記載しているのであって、同証人の右供述は採用することができず、他に原告らの右主張を科学的に裏付ける的確な資料は存在しない。
したがって、食品添加物として使用され、あるいは残留農薬として食品中に含まれる程度のイマザリルによって、人体に対する催奇形性あるいは繁殖への影響が生じる蓋然性が高いということはできない。
4 その他の農薬について
(一) クロルプロファムについて
原告らは、クロルプロファムは、人に対する安全性が確認されていないから、ADIを設定することができない旨主張するが、前掲甲第二八号証によれば、クロルプロファムについて、JMPRは、マウスに対して発がん補助物質であろうとの疑いは確認されないとしたものの、昭和四〇年現在、無影響量を決めるのに十分な毒性データが利用可能でないとして、ADIは設定していないこと、米国においては、A DIを設定していること、IARCは、発がん性について、ヒトに対する証拠はデータがなく、実験動物に対する証拠は不十分であるとして、発がん性の分類を「3(ヒトヘの発がん性について不明)」としていることが認められるのであって、少なくともヒトに対する発がん性があるとの資料は確認されていないし、他に、食品を通じて右農薬を摂取することが、その摂取量いかんに関わりなく、およそ人体にとって危険であり、原告らの生命、身体に傷害を及ぼす蓋然性が高いと認めるに足りる証拠はなく、また、本件第一告示に係る基準値が、科学的知見に照らして不合理であって、人の生命、身体に傷害を及ぼし、健康を損なう危険性があると認めるに足りる証拠もないといわなければならない。
(二) 臭素について
成立に争いのない甲第二二号証によれば、臭化メチルは、主に燻蒸剤として使用される農薬で、オランダの研究者がラットヘの経口投与により前胃にがんが発生することを報告しているが、前掲甲第二八号証によれば、臭化メチルについて、IARCは、発がん性につき、ヒトに対する証拠は、不十分で、実験動物に対する証拠も限定的であるとして、発がん性の分類を「3(ヒトヘの発がん性について不明)」としており、また、JMPRは、臭素イオンについてADIを設定していることが認められるのであって、食品を通じて右農薬を摂取することが、その摂取量いかんに関わりなく、およそ人体にとって危険であり、原告らの生命、身体に障害を及ぼす蓋然性が高いと認めるに足りる証拠はないし、また、本件各告示に係る基準値が、科学的知見に照らして不合理であって、人の生命、身体に障害を及ぼし、健康を損なう危険性があると認めるに足りる証拠もないといわなければならない。
四1 以上検討したところに加え、前掲甲第二八号証、成立に争いのない乙第四七、第四八号証によれば、販売されている農作物に残留している農薬の量は、多くの場合、残留農薬基準を下回っていること、農作物に残留している農薬は、通常、保存・調理・加工等により減少するものであること、人が生涯を通じて特定の農薬が残留する農作物を食べ続けるとは通常考えられないこと、理論一日最大摂取量は、実際に人が摂取する量に比べるとかなり過大に見積もられた数値であるといわれていることが認められ、これらのことからすると、原告ら主張の各農薬について、その残留農薬基準の最大値を含有する食品を摂取することにより、将来、原告らの生命、身体に具体的な障害が発生し、健康を損なう危険性が相当程度の蓋然性をもって予測できるということはできないといわざるを得ない。
2 なお、証人中南元は、同種の作用をもつ農薬を複数同時に摂取した場合には、相乗作用ないし相加作用が発現するおそれがある旨供述し、成立に争いのない甲第二九号証によれば、アセフェート、マラチオン、メソミルの三農薬による相乗作用による生体影響について報告がされているが、原本の存在及び成立に争いのない乙第四九号証によると、一九種類の有機リン農薬及び一種類の有機塩素農薬をそれぞれADI量レベルで配合した食餌をラットに投与して行った試験において、複数農薬による相乗作用が否定されていること(甲第二九号証は、ADIの一〇〇〇倍レベルという高用量の曝露による試験結果である。)が認められることに加え、前述したように、実際に摂取する量に比べ過大に見積もられた理論一日最大摂取量が、ADIから求められる許容される一日の摂取量を超えないように基準値が設定されていることなどからすると、複数の農薬の同時摂取による影響をそれほど重視することもできないといわざるを得ない。
五 原告亘昌子、同三宅征子の各本人尋問の結果によれば、原告らが、本件各告示による残留農薬に対する規制を不十分と考え、より厳格な規制がされなければ、将来の子孫にまで悪影響が及ぶおそれがあるなど、食品の安全性に対し不安を感じていることが窺われるが、以上検討したとおり、本件においては、原告らが本件各行為に係る農薬を含有する食品を摂取することにより、その生命、身体に具体的な障害が発生する危険のあることを認めることができないのであって、結局、原告らの右不安は、食品の安全性に対する危惧ないし懸念の域を出るものではないというべきであるし、また、原告らに食品の安全性について十分な情報を入手できないことに対する不安、不信といったものがあるとしても、それらは、不法行為法上、賠償の対象となる損害ということはできないものといわざるを得ない。
そうすると、原告らの被告国に対する損害賠償請求は、本件各行為が違法であるかどうかを判断するまでもなく、いずれも理由がないというべきである。
第三 結論
以上の次第で、原告らの被告厚生大臣に対する本訴訴えはいずれも不適法であるからこれを却下し、原告らの被告国に対する損害賠償請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき、行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条、九三条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判官岸日出夫 裁判長裁判官佐藤久夫、裁判官德岡治は、いずれも転補につき、署名捺印することができない。裁判官岸日出夫)
別表1
第1 食品の部D 各条の項中○ 米(玄米をいう。以下この項において同じ。)を次のように改める。
○ 穀物、豆類、果実、野菜、種実類、茶及びホップ
1 穀類、豆類、果実、野菜、種実類、茶及びホップの成分規格
(1) 穀類
次の表の第1欄に掲げる穀類は、同表の第2欄に掲げる物をそれぞれ同表の第3欄に定める量を超えて、
(ただし、同表の第2欄に掲げるカドミウム及びその化合物にあっては同表の第3欄に定める量以上)含有するものであってはならない。
この場合において、同表の第2欄に掲げる物について同表の第3欄に「不検出」と定めているときは、その物が検出されるものであってはならない。
第1欄
第2欄
第3欄
大麦
デルタメトリン
1.0ppm
ピレトリン
3ppm
フェニトロチオン
5.0ppm
マラチオン
2.0ppm
メトプレン
5.0ppm
小麦
デルタメトリン
1.0ppm
ピレトリン
3ppm
フェニトロチオン
10ppm
マラチオン
8.0ppm
メトプレン
5.0ppm
米(玄米をいう。以下同じ)
ピレトリン
3ppm
メトプレン
5.0ppm
そば
デルタメトリン
1.0ppm
ピレトリン
3ppm
フェニトロチオン
1.0ppm
マラチオン
2.0ppm
メトプレン
5.0ppm
とうもろこし
デルタメトリン
1.0ppm
ピレトリン
3ppm
フェニトロチオン
1.0ppm
マラチオン
2.0ppm
メトプレン
5.0ppm
ライ麦
デルタメトリン
1.0ppm
ピレトリン
3ppm
フェニトロチオン
1.0ppm
マラチオン
2.0ppm
メトプレン
5.0pp㎜
上記以外の穀類
デルタメトリン
1.0ppm
ピレトリン
3ppm
フェニトロチオン
1.0ppm
マラチオン
2.0ppm
メトプレン
5.0ppm
(2) 豆類
次の表の第1欄に掲げる豆類は、同表の第2欄に掲げる物をそれぞれ同表の第3欄に定める量を超えて含有するものであってはならない。
この場合において、同表の第2欄に掲げる物について同表の第3欄に「不検出」と定めているときは、その物が検出されるものであってはならない。
第1欄
第2欄
第3欄
えんどう
ピレトリン
1ppm
小豆類(いんげん、ささげ、サルタニ豆、サルタピア豆、バター豆、ペギア豆、ホワイト豆、ライマ豆、レンズを含む。以下同じ。)
ピレトリン
1ppm
そら豆
ピレトリン
1ppm
大豆
ピレトリン
1ppm
らっかせい
ピレトリン
1ppm
マラチオン
8.0ppm
メトプレン
2.0ppm
上記以外の豆類
ピレトリン
1ppm
マラチオン
8.0ppm
(3) 果実
次の表の第1欄に掲げる果実は同表の第2欄に掲げる物をそれぞれ同表の第3欄に定める量を超えて含有するものであってはならない。
この場合において、同表の第2欄に掲げる物について同表の第3欄に「不検出」と定めているときは、その物が検出されるものであってはならない。
第1欄
第2欄
第3欄
核果果実
あんず(アプリコットを含む。以下同じ。)
ピレトリン
1ppm
ピレトリン
8.0ppm
うめ
マラチオン
1ppm
ピレトリン
2.0ppm
おうとう(チェリーを含む。以下同じ。)
マラチオン
1ppm
マラチオン
6.0ppm
すもも(プルーンを含む。以下同じ。)
ピレトリン
1ppm
マラチオン
6ppm
ネクタリン
ピレトリン
1ppm
ピレトリン
8.0ppm
もも
デルタメトリン
1ppm
かんきつ類果実
オレンジ(ネーブルオレンジを含む。以下同じ。)
ピレトリン
1.0ppm
フェニトロチオン
1ppm
マラチオン
2.0ppm
ピレトリン
4.0ppm
グレープフルーツ
フェニトロチオン
1ppm
ピレトリン
2.0ppm
ピレトリン
4.0ppm
なつみかんの果実全体
フェニトロチオン
1ppm
マラチオン
2.0ppm
みかん
ピレトリン
1ppm
ライム
フェニトロチオン
1ppm
マラチオン
2.0ppm
ピレトリン
4.0ppm
レモン
フェニトロチオン
1ppm
マラチオン
2.0ppm
エトキシキン
4.0ppm
上記以外のかんきつ類果実
ピレトリン
1ppm
エトキシキン
2.0ppm
ピレトリン
4.0ppm
仁果果実
西洋なし
ピレトリン
3.0ppm
マラチオン
1ppm
日本なし
ピレトリン
3.0ppm
ピレトリン
1ppm
びわ
マラチオン
1ppm
ピレトリン
1ppm
マルメロ
マラチオン
1ppm
ピレトリン
1ppm
マラチオン
2.0ppm
りんご
ピレトリン
1ppm
熱帯産果実
アボガド
ピレトリン
8.0ppm
マラチオン
1ppm
キウィー
ピレトリン
8.0ppm
マラチオン
1ppm
グアバ
ピレトリン
8.0ppm
マラチオン
1ppm
なつめやし
ピレトリン
2.0ppm
マラチオン
1ppm
パイナップル
ピレトリン
1.0ppm
マラチオン
1ppm
パッションフルーツ
ピレトリン
8.0ppm
ピレトリン
1ppm
バナナ
マラチオン
1ppm
ピレトリン
8.0ppm
パパイヤ
マラチオン
1ppm
ピレトリン
2.0ppm
マンゴー
マラチオン
1ppm
ピレトリン
8.0ppm
ベリー類果実
いちご
ピレトリン
8.0ppm
クランベリー
マラチオン
1ppm
ピレトリン
8.0ppm
ハックルベリー
ピレトリン
1ppm
マラチオン
1ppm
ブラックベリー
ピレトリン
8.0ppm
マラチオン
1ppm
ブルーベリー
ピレトリン
8.0ppm
ラズベリー
マラチオン
1ppm
ピレトリン
8.0ppm
上記以外のべリー類果実
マラチオン
8.0ppm
かき
ピレトリン
1ppm
すいか
ピレトリン
1ppm
マラチオン
8.0ppm
ぶどう
ピレトリン
1ppm
マラチオン
8.0ppm
まくわうり
ピレトリン
1ppm
マラチオン
8.0ppm
メロン類果実
ピレトリン
1ppm
マラチオン
8.0ppm
上記以外の果実
ピレトリン
1ppm
マラチオン
2.0ppm
(4) 野菜
次の表の第1欄に掲げる野菜は、同表の第2欄に掲げる物をそれぞれ同表の第3欄に定める量を超えて含有するものであってはならない。
この場合において、同表の第2欄に掲げる物について同表の第3欄に「不検出」と定めているときは、その物が検出されるものであってはならない。
第1欄
第2欄
第3欄
あぶらな科野菜
かぶ類の根
ピレトリン
1ppm
カリフラワー
ピレトリン
1ppm
マラチオン
2.0ppm
キャベツ(芽キャベツを含む。)
ピレトリン
1ppm
マラチオン
2.0ppm
きょうな
ピレトリン
1ppm
マラチオン
2.0ppm
クレソン
ピレトリン
1ppm
マラチオン
6.0ppm
ケール
ピレトリン
1ppm
マラチオン
3.0ppm
こまつな
ピレトリン
1ppm
マラチオン
2.0ppm
西洋わさび
ピレトリン
1ppm
だいこん類(ラディッシュを含む。以下同じ。)の根
ピレトリン
1ppm
はくさい
ピレトリン
1ppm
マラチオン
2.0ppm
ブロッコリー
ピレトリン
1ppm
マラチオン
5.0ppm
上記以外のあぶらな科野菜
ピレトリン
1ppm
マラチオン
2.0ppm
いも類
かんしょ
ピレトリン
1ppm
こんにゃくいも
ピレトリン
1ppm
さといも類(やつがしらを含む。以下同じ。)
ピレトリン
1ppm
ばれいしょ
クロルプロファム
50ppm
ピレトリン
1ppm
やまいも(長いもをいう。以下同じ。)
ピレトリン
1ppm
上記以外のいも類
ピレトリン
1ppm
うり科野菜
かぼちゃ(スカッシュを含む。以下同じ。)
ピレトリン
1ppm
マラチオン
8.0ppm
きゅうり(ガーキンを含む。以下同じ。)
ピレトリン
1ppm
しろうり
ピレトリン
1ppm
マラチオン
2.0ppm
上記以外のうり科野菜
ピレトリン
1ppm
マラチオン
2.0ppm
きく科野菜
アーティチョーク
ピレトリン
1ppm
マラチオン
8.0ppm
エンダイブ
ピレトリン
1ppm
マラチオン
8.0ppm
ごぼう
ピレトリン
1ppm
サルシフィー
ピレトリン
1ppm
しゅんぎく
ピレトリン
1ppm
マラチオン
2.0ppm
チコリ
ピレトリン
1ppm
マラチオン
8.0ppm
レタス(サラダ菜及びちしゃを含む、以下同じ。)
ピレトリン
1ppm
マラチオン
2.0ppm
上記以外のきく科野菜
ピレトリン
1ppm
マラチオン
2.0ppm
きのこ類
しいたけ
ピレトリン
1ppm
マッシュルーム
ピレトリン
1ppm
マラチオン
8.0ppm
上記以外のきのこ類
ピレトリン
1ppm
せり科野菜
セロリ
ピレトリン
1ppm
マラチオン
2.0ppm
にんじん
ピレトリン
1ppm
パースニップ
ピレトリン
1ppm
パセリ
ピレトリン
1ppm
マラチオン
2.0ppm
みつば
ピレトリン
1ppm
上記以外のせり科野菜
ピレトリン
1ppm
マラチオン
2.0ppm
なす科野菜
トマト
ピレトリン
1ppm
なす
ピレトリン
1ppm
ピーマン
ピレトリン
1ppm
上記以外のなす科野菜
ピレトリン
1ppm
マラチオン
2.0ppm
ゆり科野菜
アスパラガス
ピレトリン
1ppm
マラチオン
8.0ppm
たまねぎ
ピレトリン
1ppm
マラチオン
8.0ppm
にんにく
ピレトリン
1ppm
マラチオン
8.0ppm
ねぎ(リーキを含む。以下同じ。)
ピレトリン
1ppm
マラチオン
8.0ppm
わけぎ
ピレトリン
1ppm
マラチオン
8.0ppm
上記以外のゆり科野菜
ピレトリン
1ppm
マラチオン
2.0ppm
えだまめ
ピレトリン
1ppm
マラチオン
2.0ppm
おくら
ピレトリン
1ppm
マラチオン
8.0ppm
しょうが
ピレトリン
1ppm
てんさい
ピレトリン
1ppm
ほうれんそう
ピレトリン
1ppm
マラチオン
2.0ppm
未成熟いんげん
ピレトリン
1ppm
マラチオン
2.0ppm
未成熟えんどう
ピレトリン
1ppm
上記以外の野菜
ピレトリン
1ppm
マラチオン
2.0ppm
(5) 種実類
次の表の第1欄に掲げる種実類は、同表の第2欄に掲げる物をそれぞれ同表の第3欄に定める量を超えて含有するものであってはならない。
この場合において、同表の第2欄に掲げる物について同表の第3欄に「不検出」と定めているときは、その物が検出されるものであってはならない。
第1欄
第2欄
第3欄
オイルシード
ごまの種子
マラチオン
2.0ppm
なたね
ピレトリン
1ppm
ひまわりの種子
ピレトリン
1ppm
ピレトリン
1ppm
べにばなの種子
マラチオン
8.0ppm
綿実
ピレトリン
1ppm
ピレトリン
1ppm
上記以外のオイルシード
マラチオン
2.0ppm
ナッツ類
アーモンド
ピレトリン
1ppm
ピレトリン
1ppm
ぎんなん
ピレトリン
1ppm
マラチオン
8.0ppm
くり
ピレトリン
1ppm
マラチオン
8.0ppm
くるみ
ピレトリン
1ppm
マラチオン
8.0ppm
ペカン
ピレトリン
1ppm
マラチオン
8.0ppm
上記以外のナッツ類
ピレトリン
1ppm
マラチオン
8.0ppm
カカオ豆
ピレトリン
1ppm
コーヒー豆
デルタメトリン
2.0ppm
(6) 茶
茶の(次の表のBHC、DDT、EPN、エンドリン、カルバリル、ジコホール、ダイアジノン、ディルドリン、パラチオン及びフェニトロチオンについては、
不発酵茶に限る。)は次の表の第1欄に掲げる物をそれぞれ同表の第1欄に定める量を超えて含有するものであってはならない。
この場合において、同表の第2欄に掲げる物について同表の第2欄に「不検出」と定めているときは、その物が検出されるものであってはならない。
第1欄
第2欄
デルタメトリン
10ppm
(7) ホップ
ホップは、次の表の第1欄に掲げる物をそれぞれ同表の第2欄に定める量を超えて含有するものであってはならない。この場合において、同表の第1欄に掲げる物について同表の第2欄に「不検出」と定めているときは、その物が検出されるものであってはならない。
第1欄
第2欄
デルタメトリン
5.0ppm
マラチオン
1.0ppm
○小麦粉
1 小麦粉の成分規格
小麦粉は、次の表の第1欄に掲げる物をそれぞれ同表の第2欄に定める量を超えて含有するものであってはならない。この場合において、同表の第1欄に掲げる物について第2欄に「不検出」と定めているときは、その物が検出されるものであってはならない。
第1欄
第2欄
フェニトロチオン
1.0ppm
マラチオン
1.2ppm
別表2
第1 食品の部D 各条の項中○ 米(玄米をいう。以下この項において同じ。)を次のように改める。
○ 穀物、豆類、果実、野菜、種実類、茶及びホップ
1 穀類、豆類、果実、野菜、種実類、茶及びホップの成分規格
(1) 穀類
次の表の第1欄に掲げる穀類は、同表の第2欄に掲げる物をそれぞれ同表の第3欄に掲げる量を超えて、
(但し、同表の第2欄に掲げるカドミウム及びその化合物にあっては同表の第3欄に定める量以上)含有するものであってはならない。
この場合において、同表の第2欄に掲げる物について同表の第3欄に「不検出」と定めているときは、その物が検出されるものであってはならない。
第1欄
第2欄
第3欄
大麦
シペルメトリン
0.5ppm
ペルメトリン
2.0ppm
小麦
シペルメトリン
0.2ppm
ペルメトリン
2.0ppm
米(玄米をいう。以下同じ。)
シペルメトリン
1.0ppm
ペルメトリン
2.0ppm
そば
シペルメトリン
1.0ppm
ペルメトリン
2.0ppm
とうもろこし
シペルメトリン
0.2ppm
ペルメトリン
2.0ppm
ライ麦
シペルメトリン
1.0ppm
ペルメトリン
2.0ppm
上記以外の穀類
シペルメトリン
1.0ppm
ペルメトリン
2.0ppm
(2) 豆類
次の表の第1欄に掲げる豆類は、同表の第2欄に掲げる物をそれぞれ同表の第3欄に定める量を超えて含有するものであってはならない。
この場合において、同表の第2欄に掲げる物について同表の第3欄に「不検出」と定めているときは、その物が検出されるものであってはならない。
第1欄
第2欄
第3欄
えんどう
シペルメトリン
1.0ppm
ペルメトリン
0.2ppm
小豆類(いんげん、ささげ、サルタニ豆、サルタピア豆、バター豆、ペギア豆、ホワイト豆、ライマ豆、レンズを含む。以下同じ。)
シペルメトリン
0.5ppm
シペルメトリン
0.1ppm
そら豆
ペルメトリン
0.2ppm
大豆
ペルメトリン
0.05ppm
シペルメトリン
0.05ppm
らっかせい
ペルメトリン
0.05ppm
シペルメトリン
0.1ppm
上記以外の豆類
ペルメトリン
0.05ppm
シペルメトリン
0.2ppm
(3) 果実
次の表の第1欄に掲げる果実は同表の第2欄に掲げる物をそれぞれ同表の第3欄に定める量を超えて含有するものであってはならない。
この場合において、同表の第2欄に掲げる物について同表の第3欄に「不検出」と定めているときは、その物が検出されるものであってはならない。
第1欄
第2欄
第3欄
核果果実
あんず(アプリコットを含む。以下同じ。)
シペルメトリン
2.0ppm
ペルメトリン
2.0ppm
うめ
シペルメトリン
2.0ppm
ペルメトリン
5.0ppm
おうとう(チェリーを含む。以下同じ。)
シペルメトリン
2.0ppm
ペルメトリン
5.0ppm
すもも(プルーンを含む。以下同じ。)
シペルメトリン
1.0ppm
ペルメトリン
2.0ppm
ネクタリン
シペルメトリン
2.0ppm
ペルメトリン
2.0ppm
もも
シペルメトリン
2.0ppm
ペルメトリン
2.0ppm
かんきつ類果実
オレンジ(ネーブルオレンジを含む。以下同じ。)
シペルメトリン
2.0ppm
ペルメトリン
5.0ppm
グレープフルーツ
シペルメトリン
2.0ppm
ペルメトリン
5.0ppm
なつみかんの果実全体
シペルメトリン
2.0ppm
ペルメトリン
5.0ppm
みかん
シペルメトリン
2.0ppm
ペルメトリン
0.5ppm
ライム
シペルメトリン
2.0ppm
ペルメトリン
5.0ppm
レモン
シペルメトリン
2.0ppm
ペルメトリン
5.0ppm
上記以外のかんきつ類果実
シペルメトリン
2.0ppm
ペルメトリン
5.0ppm
仁果果実
西洋なし
シペルメトリン
2.0ppm
ペルメトリン
2.0ppm
日本なし
シペルメトリン
2.0ppm
ペルメトリン
2.0ppm
びわ
シペルメトリン
2.0ppm
ペルメトリン
5.0ppm
マルメロ
シペルメトリン
2.0ppm
ペルメトリン
2.0ppm
りんご
シペルメトリン
2.0ppm
ペルメトリン
2.0ppm
熱帯産果実
アボガド
シペルメトリン
2.0ppm
ペルメトリン
5.0ppm
キウィー
シペルメトリン
2.0ppm
ペルメトリン
2.0ppm
グアバ
シペルメトリン
2.0ppm
ペルメトリン
5.0ppm
なつめなし
シペルメトリン
2.0ppm
ペルメトリン
5.0ppm
パイナップル
シペルメトリン
2.0ppm
ペルメトリン
5.0ppm
パッションフルーツ
シペルメトリン
2.0ppm
ペルメトリン
5.0ppm
バナナ
シペルメトリン
2.0ppm
ペルメトリン
5.0ppm
パパイヤ
シペルメトリン
2.0ppm
ペルメトリン
5.0ppm
マンゴー
シペルメトリン
2.0ppm
ペルメトリン
5.0ppm
ベリー類果実
いちご
シペルメトリン
2.0ppm
ペルメトリン
1.0ppm
クランベリー
シペルメトリン
2.0ppm
ペルメトリン
5.0ppm
ハックルベリー
シペルメトリン
2.0ppm
ペルメトリン
5.0ppm
ブラックベリー
シペルメトリン
2.0ppm
ペルメトリン
1.0ppm
ブルーベリー
シペルメトリン
2.0ppm
ペルメトリン
5.0ppm
ラズベリー
シペルメトリン
2.0ppm
ペルメトリン
1.0ppm
上記以外のベリー類果実
シペルメトリン
2.0ppm
ペルメトリン
2.0ppm
かき
シペルメトリン
2.0ppm
ペルメトリン
5.0ppm
すいか
シペルメトリン
2.0ppm
ペルメトリン
5.0ppm
ぶどう
シペルメトリン
2.0ppm
ペルメトリン
5.0ppm
まくわうり
シペルメトリン
2.0ppm
ペルメトリン
0.1ppm
メロン類果実
シペルメトリン
2.0ppm
ペルメトリン
0.1ppm
上記以外の果実
シペルメトリン
2.0ppm
ペルメトリン
5.0ppm
(4) 野菜
次の表の第1欄に掲げる野菜は、同表の第2欄に掲げる物をそれぞれ同表の第3欄に定める量を超えて含有するものであってはならない。
この場合において、同表の第2欄に掲げる物について同表の第3欄に「不検出」と定めているときは、その物が検出されるものであってはならない。
第1欄
第2欄
第3欄
あぶらな科野菜
かぶ類の根
シペルメトリン
0.05ppm
ペルメトリン
3.0ppm
かぶ類の葉
シペルメトリン
5.0ppm
ペルメトリン
3.0ppm
カリフラワー
シペルメトリン
1.0ppm
ペルメトリン
0.5ppm
キャベツ(芽キャベツを含む。)
シペルメトリン
1.0ppm
ペルメトリン
5.0ppm
きょうな
シペルメトリン
5.0ppm
ペルメトリン
3.0ppm
クレソン
シペルメトリン
5.0ppm
ペルメトリン
5.0ppm
ケール
シペルメトリン
1.0ppm
ペルメトリン
5.0ppm
こまつな
シペルメトリン
5.0ppm
ペルメトリン
5.0ppm
西洋わさび
シペルメトリン
0.05ppm
ペルメトリン
0.5ppm
だいこん類(ラディッシュを含む。以下同じ。)
シペルメトリン
0.05ppm
ペルメトリン
0.1ppm
だいこん類の葉
シペルメトリン
5.0ppm
ペルメトリン
3.0ppm
はくさい
シペルメトリン
5.0ppm
ペルメトリン
5.0ppm
ブロッコリー
シペルメトリン
1.0ppm
ペルメトリン
2.0ppm
上記以外のあぶらな科野菜
シペルメトリン
5.0ppm
ペルメトリン
3.0ppm
いも類
かんしょ
シペルメトリン
0.05ppm
ペルメトリン
0.2ppm
こんにゃくいも
シペルメトリン
0.05ppm
ペルメトリン
0.2ppm
さといも類(やつがしらを含む。)以下同じ。)
シペルメトリン
0.05ppm
ペルメトリン
0.2ppm
ばれいしょ
シペルメトリン
0.05ppm
ペルメトリン
0.05ppm
やまいも(長いもをいう。以下同じ。)
シペルメトリン
0.05ppm
ペルメトリン
0.2ppm
上記以外のいも類
シペルメトリン
0.05ppm
ペルメトリン
0.2ppm
うり科野菜
かぼちゃ(スカッシュを含む。以下同じ。)
シペルメトリン
5.0ppm
ペルメトリン
0.5ppm
きゅうり(ガーキンを含む。以下同じ。)
シペルメトリン
0.5ppm
ペルメトリン
0.5ppm
しろうり
シペルメトリン
5.0ppm
ペルメトリン
3.0ppm
上記以外のうり類
シペルメトリン
5.0ppm
ペルメトリン
3.0ppm
きく科野菜
アーティチョーク
シペルメトリン
5.0ppm
ペルメトリン
10ppm
エンダイブ
シペルメトリン
5.0ppm
ペルメトリン
3.0ppm
ごぼう
シペルメトリン
0.5ppm
ペルメトリン
3.0ppm
サルシフィー
シペルメトリン
0.05ppm
ペルメトリン
3.0ppm
しゅんぎく
シペルメトリン
5.0ppm
ペルメトリン
3.0ppm
チコリ
シペルメトリン
5.0ppm
ペルメトリン
3.0ppm
レタス(サラダ菜及びちしゃを含む。以下同じ。)
シペルメトリン
2.0ppm
ペルメトリン
3.0ppm
上記以外のきく科野菜
シペルメトリン
5.0ppm
ペルメトリン
3.0ppm
きのこ類
しいたけ
シペルメトリン
5.0ppm
ペルメトリン
3.0ppm
マッシュルーム
シペルメトリン
0.05ppm
ペルメトリン
0.1ppm
上記以外のきのこ類
シペルメトリン
5.0ppm
ペルメトリン
3.0ppm
せり科野菜
セロリ
シペルメトリン
5.0ppm
ペルメトリン
2.0ppm
にんじん
シペルメトリン
0.05ppm
ペルメトリン
1.0ppm
パースニップ
シペルメトリン
0.05ppm
ペルメトリン
3.0ppm
パセリ
シペルメトリン
5.0ppm
ペルメトリン
3.0ppm
みつば
シペルメトリン
5.0ppm
ペルメトリン
3.0ppm
上記以外のせり科野菜
シペルメトリン
5.0ppm
ペルメトリン
3.0ppm
なす科野菜
トマト
シペルメトリン
2.0ppm
ペルメトリン
1.0ppm
なす
シペルメトリン
0.5ppm
ペルメトリン
1.0ppm
ピーマン
シペルメトリン
2.0ppm
ペルメトリン
3.0ppm
上記以外のなす科野菜
シペルメトリン
5.0ppm
ペルメトリン
3.0ppm
ゆり科野菜
アスパラガス
シペルメトリン
5.0ppm
ペルメトリン
3.0ppm
たまねぎ
シペルメトリン
0.1ppm
ペルメトリン
3.0ppm
にんにく
シペルメトリン
5.0ppm
ペルメトリン
3.0ppm
ねぎ(リーキを含む。以下同じ。)
シペルメトリン
5.0ppm
ペルメトリン
3.0ppm
わけぎ
シペルメトリン
5.0ppm
ペルメトリン
3.0ppm
上記以外のゆり科野菜
シペルメトリン
5.0ppm
ペルメトリン
3.0ppm
えだまめ
シペルメトリン
5.0ppm
ペルメトリン
3.0ppm
おくら
シペルメトリン
5.0ppm
ペルメトリン
5.0ppm
さとうきび
ペルメトリン
0.1ppm
しょうが
シペルメトリン
5.0ppm
ペルメトリン
3.0ppm
てんさい
シペルメトリン
0.1ppm
ペルメトリン
0.2ppm
ほうれんそう
シペルメトリン
2.0ppm
ペルメトリン
2.0ppm
未成熟いんげん
シペルメトリン
0.5ppm
ペルメトリン
3.0ppm
未成熟えんどう
シペルメトリン
0.05ppm
ペルメトリン
3.0ppm
上記以外の野菜
シペルメトリン
5.0ppm
ペルメトリン
3.0ppm
(5) 種実類
次の表の第1欄に掲げる種実類は、同表の第2欄に掲げる物をそれぞれ同表の第3欄に定める量を超えて含有するものであってはならない。
この場合において、同表の第2欄に掲げる物について同表の第3欄に「不検出」と定めているときは、その物が検出されるものであってはならない。
第1欄
第2欄
第3欄
オイルシード
ごまの種子
シペルメトリン
0.2ppm
ペルメトリン
5.0ppm
なたね
シペルメトリン
0.2ppm
ペルメトリン
0.05ppm
ひまわりの種子
シペルメトリン
0.2ppm
ペルメトリン
1.0ppm
べにばなの種子
シペルメトリン
0.2ppm
ペルメトリン
5.0ppm
綿実
シペルメトリン
0.2ppm
ペルメトリン
0.5ppm
上記以外のオイルシード
シペルメトリン
0.2ppm
ペルメトリン
5.0ppm
ナッツ類
アーモンド
シペルメトリン
2.0ppm
ペルメトリン
0.1ppm
ぎんなん
シペルメトリン
2.0ppm
ペルメトリン
5.0ppm
くり
シペルメトリン
2.0ppm
ペルメトリン
5.0ppm
くるみ
シペルメトリン
2.0ppm
ペルメトリン
5.0ppm
ペカン
シペルメトリン
2.0ppm
ペルメトリン
5.0ppm
上記以外のナツ類
シペルメトリン
2.0ppm
ペルメトリン
0.05ppm
コーヒー豆
シペルメトリン
0.05ppm
ペルメトリン
0.05ppm
(6) 茶
茶の(次の表のBHC、DDT、EPN、エンドリン、カルバリル、ジコホール、ダイアジノン、ディルドリン、パラチオン及びフェニトロチオンについては、
不発酵茶に限る。)は次の表の第1欄に掲げる物をそれぞれ同表の第2欄に定める量を超えて含有するものであってはならない。
この場合において、同表の第1欄に掲げる物について同表の第2欄に「不検出」と定めているときは、その物が検出されるものであってはならない。
第1欄
第2欄
シペルメトリン
20ppm
ペルメトリン
20ppm
(7) ホップ
ホップは、次の表の第1欄に掲げる物をそれぞれ同表の第2欄に定める量を超えて含有するものであってはならない。
この場合において、同表の第1欄に掲げる物について同表の第2欄に「不検出」と定めているときは、この物が検出されるものであってはならない。
第1欄
第2欄
ペルメトリン
50ppm
別表3
第1 食品の部D 各条の項中○ 米(玄米をいう。以下この項において同じ。)を次のように改める。
○ 穀物、豆類、果実、野菜、種実類、茶及びホップ
1 穀類、豆類、果実、野菜、種実類、茶及びホップの成分規格
(1) 穀類
次の表の第1欄に掲げる穀類は、同表の第2欄に掲げる物をそれぞれ同表の第3欄に掲げる量を超えて、(但し、同表の第2欄に掲げるカドミウム及びその化合物にあっては同表の第3欄に定める量以上)含有するものであってはならない。この場合において、同表の第2欄に掲げる物について同表の第3欄に「不検出」と定めているときは、その物が検出されるものであってはならない。
第1欄
第2欄
第3欄
そば
臭素
180ppm
とうもろこし
臭素
80ppm
(3) 果実
次の表の第1欄に掲げる果実は、同表の第2欄に掲げる物をそれぞれ同表の第3欄に定める量を超えて、含有するものであってはならない。この場合において、同表の第2欄に掲げる物について同表の第3欄に「不検出」と定めているときは、その物が検出されるものであってはならない。
第1欄 熱帯産果実
第2欄
第3欄
キウィー
臭素
30ppm
上記以外の果実
臭素
60ppm
別表4
第1 食品の部D 各条の項中○ 穀類、豆類、果実、野菜、種実類、茶及びホップの1 穀類、豆類、果実、野菜、種実類、茶及びホップの成分規格をを次のように改める。
のうち左に掲げる成分規格
(5) 種実類
次の表の第1欄に掲げる種実類は、同表の第2欄に掲げる物をそれぞれ同表の第3欄に定める量を超えて、含有するものであってはならない。この場合におい て、同表の第2欄に掲げる物について同表の第3欄に「不検出」と定めていると きは、その物が検出されるものであってはならない。
第1欄
第2欄
第3欄
オイルシード
なたね
エトリムホス
一〇ppm
別表5
第1 食品の部D 各条の項中○ 穀物、豆類、果実、野菜、種実類、茶及びホップの1 穀類、豆類、果実、野菜、種実類、茶及びホップの成分規格のうち、以下の改正部分
(3) 果実
第1欄
第2欄
第3欄
かんきつ類果実(なつみかん・なつみかんの外果皮・みかんを除く)
イマザリル
5.0ppm
仁果果実
イマザリル
5.0ppm
熱帯産果実
アボカド
イマザリル
2.0ppm
キウィー
イマザリル
2.0ppm
グァバ
イマザリル
2.0ppm
なつめやし
イマザリル
2.0ppm
パイナップル
イマザリル
2.0ppm
パッションフルーツ
イマザリル
2.0ppm
バナナ
イマザリル
2.0ppm
パパイヤ
イマザリル
2.0ppm
マンゴー
イマザリル
2.0ppm
ベリー類果実
いちご
イマザリル
2.0ppm
ラズベリー
イマザリル
2.0ppm
かき
イマザリル
2.0ppm
すいか
イマザリル
2.0ppm
まくわうり
イマザリル
2.0ppm
メロン
イマザリル
2.0ppm
(4) 野菜
第1欄
第2欄
第3欄
いも類
ばれいしょ
イマザリル
5.0ppm
うり科野菜
かぼちゃ(スカッシュを含む。以下同じ。)
イマザリル
2.0ppm
しろうり
イマザリル
2.0ppm
上記以外のうり科野菜
イマザリル
2.0ppm
(6) 茶
第1欄
第2欄
ピレトリン
3ppm
別表6
第1 食品の部D 各条の項中○ 穀物、豆類、果実、野菜、種実類、茶及びホップの1 穀類、豆類、果実、野菜、種実類、茶及びホップの成分規格のうち、以下の改正部分
(1) 穀類
第1欄
第2欄
第3欄
大麦
ジクロルボス
0.2ppm
小麦
ジクロルボス
0.2ppm
米(玄米をいう。以下同じ)
ジクロルボス
0.2ppm
そば
ジクロルボス
0.2ppm
とうもろこし
アセフェート
0.5ppm
ジクロルボス
0.2ppm
ライ麦
ジクロルボス
0.2ppm
上記以外の穀類
ジクロルボス
0.2ppm
(2) 豆類
第1欄
第2欄
第3欄
えんどう
ジクロルボス
0.1ppm
小豆類(いんげん、ささげ、サルタニ豆、サルタピア豆、バター豆、ペギア豆、ホワイト豆、ライマ豆、レンズを含む。以下同じ。)
アセフェート
3.0ppm
ジクロルボス
0.1ppm
そら豆
ジクロルボス
0.1ppm
大豆
アセフェート
0.5ppm
ジクロルボス
0.2ppm
らっかせい
アセフェート
0.2ppm
ジクロルボス
0.2ppm
上記以外の豆類
ジクロルボス
0.2ppm
(3) 果実
第1欄
第2欄
第3欄
核果果実
ジクロルボス
0.1ppm
かんきつ類果実
オレンジ(ネーブルオレンジを含む。以下同じ。)
アセフェート
5.0ppm
ジクロルボス
0.2ppm
グレープフルーツ
アセフェート
5.0ppm
ジクロルボス
0.2ppm
なつみかんの果実全体
アセフェート
5.0ppm
ジクロルボス
0.2ppm
みかん
アセフェート
5.0ppm
ジクロルボス
0.1ppm
ライム
アセフェート
5.0ppm
ジクロルボス
0.2ppm
レモン
アセフェート
5.0ppm
ジクロルボス
0.2ppm
上記以外のかんきつ類果実
アセフェート
5.0ppm
ジクロルボス
0.2ppm
仁果果実
ジクロルボス
0.1ppm
熱帯産果実
アボガド
ジクロルボス
0.1ppm
キウィー
ジクロルボス
0.1ppm
グアバ
ジクロルボス
0.1ppm
なつめなし
ジクロルボス
0.1ppm
パイナップル
ジクロルボス
0.1ppm
パッションフルーツ
ジクロルボス
0.1ppm
バナナ
ジクロルボス
0.1ppm
パパイヤ
ジクロルボス
0.1ppm
マンゴー
ジクロルボス
0.1ppm
ベリー類果実
いちご
ジクロルボス
0.3ppm
クランベリー
アセフェート
0.5ppm
ジクロルボス
0.1ppm
ハックルベリー
ジクロルボス
0.1ppm
ブラックベリー
ジクロルボス
0.1ppm
ブルーベリー
ジクロルボス
0.1ppm
ラズベリー
ジクロルボス
0.1ppm
上記以外のべリー類果実
ジクロルボス
0.1ppm
かき
アセフェート
2.0ppm
ジクロルボス
0.1ppm
すいか
アセフェート
0.5ppm
ジクロルボス
0.1ppm
ぶどう
アセフェート
5.0ppm
まくわうり
ジクロルボス
0.1ppm
メロン類果実
ジクロルボス
0.1ppm
上記以外の果実
アセフェート
1.0ppm
ジクロルボス
0.1ppm
(4) 野菜
第1欄
第2欄
第3欄
あぶらな科野菜
かぶ類の根
アセフェート
1.0ppm
ジクロルボス
0.1ppm
かぶ類の葉
アセフェート
10ppm
ジクロルボス
0.1ppm
カリフラワー
アセフェート
5.0ppm
ジクロルボス
0.1ppm
キャベツ(芽キャベツを含む。)
アセフェート
5.0ppm
ジクロルボス
0.1ppm
きょうな
アセフェート
5.0ppm
ジクロルボス
0.1ppm
クレソン
アセフェート
5.0ppm
ジクロルボス
0.1ppm
ケール
アセフェート
5.0ppm
ジクロルボス
0.1ppm
こまつな
アセフェート
5.0ppm
ジクロルボス
0.1ppm
西洋わさび
アセフェート
5.0ppm
ジクロルボス
0.1ppm
だいこん類(ラディッシュを含む。以下同じ。)
アセフェート
1.0ppm
ジクロルボス
0.1ppm
だいこん類の葉
アセフェート
10ppm
ジクロルボス
0.1ppm
はくさい
アセフェート
5.0ppm
ジクロルボス
0.1ppm
ブロッコリー
アセフェート
5.0ppm
ジクロルボス
0.1ppm
上記以外のあぶらな科野菜
アセフェート
5.0ppm
ジクロルボス
0.1ppm
いも類
かんしよ
ジクロルボス
0.1ppm
こんにゃくいも
ジクロルボス
0.1ppm
さといも類(やつがしらを含む。以下同じ。)
ジクロルボス
0.1ppm
ばれいしょ
アセフェート
1.0ppm
ジクロルボス
0.1ppm
やまいも(長いもをいう。以下同じ。)
アセフェート
0.5ppm
ジクロルボス
0.1ppm
上記以外のいも類
ジクロルボス
0.1ppm
うり科野菜
かぼちゃ(スカッシュを含む。以下同じ。)
ジクロルボス
0.1ppm
きゅうり(ガーキンを含む。以下同じ。)
アセフェート
5.0ppm
ジクロルボス
0.2ppm
しろうり
ジクロルボス
0.1ppm
上記以外のうり科野菜
アセフェート
0.5ppm
ジクロルボス
0.1ppm
きく科野菜
アーティチョーク
ジクロルボス
0.1ppm
エンダイブ
ジクロルボス
0.1ppm
ごぼう
アセフェート
0.1ppm
ジクロルボス
0.1ppm
サルシフィー
ジクロルボス
0.1ppm
しゅんぎく
ジクロルボス
0.1ppm
チコリ
ジクロルボス
0.1ppm
レタス(サラダ菜及びちしゃを含む。以下同じ。)
アセフェート
5.0ppm
ジクロルボス
0.1ppm
上記以外のきく科野菜
アセフェート
0.2ppm
ジクロルボス
0.1ppm
きのこ類
しいたけ
ジクロルボス
0.1ppm
マッシュルーム
ジクロルボス
0.1ppm
上記以外のきのこ類
ジクロルボス
0.1ppm
せり科野菜
セロリ
アセフェート
10ppm
ジクロルボス
0.1ppm
にんじん
ジクロルボス
0.1ppm
パースニップ
ジクロルボス
0.1ppm
パセリ
アセフェート
0.5ppm
ジクロルボス
0.1ppm
みつば
ジクロルボス
0.1ppm
上記以外のせり科野菜
アセフェート
0.5ppm
ジクロルボス
0.1ppm
なす科野菜
トマト
アセフェート
5.0ppm
ジクロルボス
0.1ppm
なす
アセフェート
5.0ppm
ジクロルボス
0.1ppm
ピーマン
アセフェート
5.0ppm
ジクロルボス
0.1ppm
上記以外のなす科野菜
アセフェート
5.0ppm
ジクロルボス
0.1ppm
ゆり科野菜
アスパラガス
ジクロルボス
0.1ppm
たまねぎ
アセフェート
0.5ppm
ジクロルボス
0.1ppm
にんにく
アセフェート
2.0ppm
ジクロルボス
0.1ppm
ねぎ(リーキを含む。以下同じ。)
アセフェート
0.1ppm
ジクロルボス
0.1ppm
わけぎ
アセフェート
0.1ppm
ジクロルボス
0.1ppm
上記以外のゆり科野菜
アセフェート
0.5ppm
ジクロルボス
0.1ppm
えだまめ
アセフェート
0.5ppm
ジクロルボス
0.1ppm
おくら
アセフェート
5.0ppm
ジクロルボス
0.1ppm
さとうきび
ジクロルボス
0.1ppm
しょうが
アセフェート
0.1ppm
ジクロルボス
0.1ppm
てんさい
アセフェート
0.1ppm
ジクロルボス
0.1ppm
ほうれんそう
ジクロルボス
0.1ppm
未成熟いんげん
アセフェート
3.0ppm
ジクロルボス
0.2ppm
未成熟えんどう
アセフェート
0.1ppm
ジクロルボス
0.1ppm
上記以外の野菜
アセフェート
3.0ppm
ジクロルボス
0.1ppm
(5) 種実類
第1類
第2欄
第3欄
オイルシード
ごまの種子
ジクロルボス
0.1ppm
なたね
ジクロルボス
0.1ppm
ジメチピン
0.1ppm
ひまわりの種子
ジクロルボス
0.1ppm
ジメチピン
0.5ppm
べにばなの種子
ジクロルボス
0.1ppm
綿実
ジクロルボス
0.1ppm
ジメチピン
0.5ppm
上記以外のオイルシード
ジクロルボス
0.1ppm
ジメチピン
0.2ppm
ナッツ類
アーモンド
ジクロルボス
0.2ppm
ぎんなん
ジクロルボス
0.2ppm
くり
ジクロルボス
0.2ppm
くるみ
ジクロルボス
0.2ppm
ペカン
ジクロルボス
0.2ppm
上記以外のナッツ類
アセフェート
0.1ppm
ジクロルボス
0.2ppm
カカオ豆
ジクロルボス
0.5ppm
コーヒー豆
ジクロルボス
0.2ppm
(6) 茶
第1欄
第2欄
アセフェート
10ppm
ジクロルボス
0.1ppm
(7) ホップ
第1欄
第2欄
ジクロルボス
0.1ppm
別表7
第1欄
第2欄
第3欄
あぶらな科野菜
だいこん類
(ラディッシュを含む。以下同じ。)の根
ジクロルボス
0.1ppm
だいこん類の葉
ジクロルボス
0.1 ppm
ゆり科野菜
アスパラガス
ジクロルボス
0.1 ppm
ほうれんそう
ジクロルボス
0.1 ppm